先日「ノリス選手が、2打罰を受けてスコア訂正となった」と報道されました。
この記事の中で、
「視聴者からの指摘というのは、公平性などの観点から長らく議論に挙げられている。これについてPGAは『我々も全てに対して、視聴者の主張を聞くという事はない。ただ疑いが出てきたという話になると調べなければいけない部分ではある。確かにテレビに映っていた、映っていないところが(公平性として)どうなんだということはあるかもしれません』と話した。」
とあり、
この記事のこの部分ーー視聴者からの指摘の問題ーーにも考えさせられる所は多いと思います。
ただ、今回は上のアルバの記事に書かれた
「2017年に米国女子メジャー「ANAインスピレーション」において、レクシー・トンプソン(米国)が受けた裁定が大きな議論となったことがある。」
という部分について、
レクシートンプソンのメジャータイトル逃した事件を思い出しましたので、、ルールの変遷について以下で考えてみました。
【解説】レクシー・トンプソンの4罰打事件は、2025年ならどうなっていたのか?現在のゴルフ規則に基づいて解説してみました。
■ 事件の概要(2017年 ANAインスピレーション)
レクシー・トンプソン選手は3日目の17番ホールで、パッティンググリーン上でマークした球を、元の位置と異なる場所にリプレースしてパットしました。ズレはわずか1インチほど。
本人もそのミスに気づかずプレーを続けていましたが、翌日になってテレビ視聴者からの通報があり、LPGAが映像を確認。
以下の2つの違反で合計4罰打が科されました。
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誤所からのプレー(2罰打)
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罰打の記載漏れによるスコア過少申告(2罰打)
これによりスコアが急変。最終日はプレーオフの末に敗れ、涙を飲む結果となりました。
■ 現在(2025年)のルールではどうなる?
1. 誤所からのプレーは「今も2罰打」
現在も、球をマークの正確な位置に戻さずにプレーした場合、それは「誤所からのプレー」となり、2罰打が科されます。
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【規則14.7a】
ストロークプレーにおいて誤所からプレーした場合、**一般の罰(2罰打)**が課されます。 -
【規則14.2c(2)】
球は正確な元の位置にリプレースする必要があり、そうでない場合は誤所扱いとなります。
したがって、当時と同様に「誤所」のミス自体に対しては、今も2罰打が妥当です。
2. スコアに罰を記載し忘れても「今は追加罰なし」
2017年当時は、「罰打の記載漏れ」でさらに2罰打が追加されていましたが、
現在ではこの追加罰は廃止されています。
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【旧規則6-6d】
プレーヤーが罰打を記載せずに提出 → 失格または2罰打(例外規定) -
【現行規則3.3b(3)】
プレーヤーが罰に気づかずに提出していた場合、追加の罰は科されない。
→ 後からその罰(今回は2罰打)をスコアに加算するだけでよい。
つまり、現在ならこのケースでは2罰打のみで済みます。
■ 結論:2025年のルールなら「2罰打だけ」で済んだ
レクシー・トンプソンのケースを2025年のルールで再現すると、次のようになります。
項目 | 2017年(旧ルール) | 2025年(現行ルール) |
---|---|---|
誤所からのプレー | 2罰打 | 2罰打 |
スコア誤記(過少申告) | 2罰打 | 罰なし(記載漏れでもOK) |
視聴者の通報 | 有効、罰が適用された | 無効?(通報は受け付けない?) |
つまり、現在のルールであればレクシー・トンプソンは合計2罰打のみ。
そして、そもそも視聴者通報が無効とも考えられているので、罰自体が科されない可能性もあるのです。
■ ルールは進化していると感じます
この一件をきっかけに、ゴルフ界では「視聴者による監視の是非」や「ビデオ判定の限界」に関する議論が巻き起こりました。
その後、プレーヤーの誠実さと合理的判断を尊重するというルールの本質に立ち返る形で、
2019年の大改訂、そして現在のルールへと繋がっているようです。
ルールは選手を縛るものでもありますが、守った上で選手を守るものでもあると私も考えます。
今回の私記事の主題は、ルールの変遷についてなので、「視聴者の通報」については上にも述べたように私見は書きませんが、
ルールの変遷を知ることで、より深くゴルフを理解できることに間違いはなく、これからもルールに関することを記事にしていこうと思います。
【追記】上原彩子プロの「68打罰」事件
私が大好きだった(今は現役で活躍されているのかわからないので、過去形です)上原彩子選手の68打罰事件についても、感じたことを下に追記します。
□背景:上原彩子プロの68打罰事件
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初日のスコアは73。
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ローカルルールで「リフト&クリーン(ボールを拾い、拭いて元の位置に戻す)」が適用されていました。
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上原プロは「1クラブ長さ以内でプレースできる」と勘違い→19カ所で誤所からプレー(2打×19=38罰打)。
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スコアカードに記載もれ(15ホール分)でさらに30罰打(2打×15)。
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合計:38+30=68罰打、終わってみれば「141」となる前代未聞のトラブルとなりましたGDOゴルフニュースgolf.hochi.co.jp。
□2025年のルール下ではどうなる?
1. ローカルルールの誤所処置に対する罰則
誤所からのプレーについて、2025年でも基本は変わりません:
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ゴルフ規則14.7a:「誤所からのプレー」ではストロークプレーにおいて2罰打。
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また、ローカルルールに従わず「1クラブレングス以内にプレース」してしまった場合、これが「誤所」扱いとなります。
したがって、 2025年も誤所処理ごとに2罰打が課せられます。
— つまり、およそ「38罰打」は変わらない想定です。
2. スコアカードの記載漏れに対する対応
2016年当時は、罰打を記載しなかったことで過少申告扱い=2打×記載漏れホール分の追加罰が課されていましたが、2025年では違います:
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旧ルール(2016年):罰打を書き忘れると失格、ただし知らずに記載漏れだった場合は2罰打の追加で済む(例外規定)GDOゴルフニュースgolf.hochi.co.jp。
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現行ルール(2019年以降):追加の2罰打は廃止。プレーヤーがその罰を知らずに提出した場合、失格にはならず、罰そのもののみを後から加える(規則3.3b(3))GDOゴルフニュースgolf.hochi.co.jpGDOゴルフニュース。
つまり、スコアカードの記載漏れでさらに30打が加算されることはなくなりました。
□結論:2025年なら上原プロの罰打は、38打
項目 | 2016年旧運用 | 2025年現行ルール |
---|---|---|
誤所処置による罰 | 2打 × 19回 = 38打 | 2打 × 19回 = 38打 |
スコア記載漏れ | 2打 × 15回 = 30打 | なし(追加罰廃止) |
合計罰打 | 68打 | 38打 |
したがって、2025年の規則で同様のミスが起きた場合、罰打は合計38打で済みます。
【特筆すべきは】2日目も出場し、そして4アンダー!
上原彩子プロのことをさらに好きになったのは、彼女が2日目も出場したことです。
初日の68打罰後の心境は、恥ずかしさと情けなさなどで、とてもその後プレーを続けられないのでは。
私なら2日目は棄権したと思いますが、上原プロは出場し、しかも4アンダー!
下がそのスコアボードです。
素晴らしいスコアボードだと思いませんか。
上原彩子プロは、現在も素晴らしい人生を送っていると思います。